日本語には「他界」「永眠」「息を引き取る」など様々な「死」を意味する婉曲表現が存在しますが、英語には更に多くの死に関連した単語、イディオムが存在します(例えば、“pass away” や “be gone” なんかは有名ですよね)。この記事ではその中でも、初見では絶対に理解できないような変わった英語表現を紹介したいと思います。
kick the bucket
直訳すると「バケツを蹴る」ですが、「死ぬ、他界する」という意味になる比較的有名なイディオムです (例:He kicked the bucket last year). また、”My espresso machine kicked the bucket” のように物が故障した時にも使われます。有力な語源は、首にロープをかけて台のバケツを蹴る首吊りの行為に由来する、という少し物騒なものです。
buy the farm
直訳すると「農場を買う」ですが、こちらも「死ぬ」という意味になります。(例:He bought the farm last year). 基本的に過去形 (bought the farm) で使うことが多く、過去形で辞書に登録されていることもあります。1950年代の戦時中にアメリカのair force (空軍) の間で使われていたスラングなので、主に戦死を表すのに使います。語源は定かではないのですが、一つの説(≒連想ゲーム)として、「戦争が終わって軍隊を引退したら、田舎で農場を買って平和に暮らすんだ…」という軍人の儚い夢に由来する、というものがあります(個人的な解釈ですが、「あぁ、あいつはもう”引退”して、今頃あの世で農業でもやってるよ…」と考えると分かりやすいかもしれません)。
pushing up daisies
直訳すると「デイジー(雛菊)を上に押している」ですが、”be dead”と同じ意味になります(上の写真の花がデイジーです)。これは、デイジーが墓地によく咲いているため、「土の中に埋葬されている故人がデイジーを下からプッシュして(押し上げて)いる」という、冗談っぽい比喩から生まれた表現です(常にプッシュしている体勢なため、be pushing up daisies と 進行形で使う)。ちなみに、push-up は「腕立て伏せ」という意味になります。
I’ll be pushing up daisies before it happens
それが起きる前に、私はデイジーを押し上げているだろう(この世にはいないだろう)
one’s number is up
直訳すると「(受付番号などで)自分の番が来る」で、比喩的に「(あの世に行く)時期が来る」という意味になります。「はい、じゃあ(あの世に行く)次の方〜」みたいなイメージで考えるとわかりやすいかもしれません笑。(例)I don’t want to feel any pain when my number is up. (自分の番がやって来たときは、痛みを感じたくない。). また、”You’re up” で 「あなたの番だよ (It’s your turn)」という意味になります。
bite the dust
直訳すると「砂ぼこり、土を噛む」という意味ですが、「(戦闘などで撃たれたりして)倒れる、他界する」という意味です。文字通り、地面に横たわって歯を食いしばっている様子を表します。
give up the ghost
直訳すると「ゴーストを諦める」という意味ですが、ここでのゴーストはオバケではなくて、魂という意味です(ghost=この世に存在する故人の魂 => オバケ)。つまり、「魂を諦める(手放す)」ので、「死ぬ」とか「故障する」という意味になります。ちなみに、聖書でも使われている古くからある表現です。
cash (in) one’s chips
直訳すると「自分のチップを現金化する」という意味で、「チップ」とはカジノでお金の代わりに用いられるコインのことです(カジノでは入店時に現金をチップに交換します)。普通、手元にあるチップを現金化するのは賭け事を終えてカジノを去る時なので、そこから転じて「今までやっていたことを辞める」とか「他界する(この世から退場する)」という意味になります。同様に、”check out” (ホテルのチェックアウトをする) が「他界する」という意味で使われることもあります。
be knocking on heaven’s door
直訳は「天国のドアをノックしている」で、今まさに死の瞬間が間近に迫っている時を表します。これは比較的わかりやすい例ですね。
*** 次のイディオムは「他界する」とは意味が少し異なるので注意 ***
sleep with the fishes
直訳すると「魚と一緒に眠る」ですが、「(何者かによって密に)殺される」という意味になります。より分かりやすく言い換えると、「海の底に沈められた」という意味です。
a nail in the coffin
直訳すると「棺桶の釘」ですが、「トドメの一撃」や「命取りとなるもの」という意味になります。棺桶の蓋を釘で打ち付けてトドメをさす(埋葬を確実なものにする)というイメージです。これまでのイディオムとは意味が少し異なりますが、やや関連しているので紹介しました。
The pandemic put a nail in the coffin of our businesses
パンデミックが我々のビジネスにとって命取りとなった。
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