役不足の本来の意味
よく誤用される単語として有名ですが、本来の意味は
- 「その人の能力に対して,与えられた役割や役目が軽すぎること」
です。例えば
- あんなチョイ役はベテランの彼には役不足だ(もっと重要な役を与えるべきだ)
のように使います。そのため、「そんな重要な仕事、私なんかじゃ役不足です」と謙遜のために役不足を用いるのは本来は誤用で、その場合は役不足ではなく「力不足」や「器でない」を使うべきです。とはいったものの、最近は誤用の方が広まってきているようで、実際にこの文化省の行った調査によると50.3%の人が「力不足」の意味で理解していると回答しています(一方、本来の意味を認識している人は40.3%)。
個人的には、役不足の本来の意味を他の単語で言い換えるのが難しく、かつ「役(役割、役職など)」が「不足」しているという文字通りの解釈で本来の意味は捉えらるので、誤用よりは元々の意味を残した方がいいのではないかなと思っています。
「役不足」を英語で表現
(人) be overqualified for (役職, 仕事)
これで、「人が役職に対してoverqualified(必要とされるレベルをはるかに超えている)」という意味になり、つまり言い換えると「その役職はその人にとって役不足だ」という意味になります。例えば
- The veteran player is overqualified for a backup position.
「あのベテラン選手にとって、控えの役割は役不足だ」
のように使えます。個人的に overqualified という単語で思い出すのが、英国ドラマの「シャーロックホームズ」の登場人物であるジョン・ワトソンが “you’re a bit over-qualified”と町のクリニックの就職面接で言われているシーンです。小さな診療所の医師としては、アフガニスタンで軍医を務めるなど異例の経歴を持つジョンは、overqualified だとみなされたわけです。
ちなみに、 overqualified = over(超える) + qualified (資格のある、適任な)で、反対語はunderqualified (under + qualified) となり、意味は「力不足、能力が足らない、器でない」です。誤用の意味で使われている「役不足」を英語に訳す場合は、この単語がぴったりです。
- (例)I am underqualified for the job
「その仕事をやるのは私の器ではない/私には能力・資格が足りない」
「*そんな仕事、私には役不足です (誤用)」
(役職, 仕事) is too trivial for (人)
「その人にとっては、その役職はくだらなすぎる」という意味です。「(役職が人にとって)役不足」という日本語の語順を保つのであれば、こちらの表現の方が適切です。なお、trivial は「些細な、取るに足りない」という意味の単語で、trivia (トリビア、雑学、些細な知識)の形容詞です。
物にとって「役不足」(必要以上に高機能)の英語表現
over-engineered
「必要以上に複雑、多機能」の場合に使えます。外国人にとって日本のトイレはover-engineered でしょう。
overkill
こちらも「必要以上に高性能で無駄」「やりすぎ」という文脈で使われます。おそらく、戦闘などで過剰な武器を使って相手を撃破 (kill) する行為から、このような意味が生まれたのでしょう。
- (例)10GB is overkill for a phone
「10GBもスマホに必要ない、やりすぎ」
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